フレーベルは、幼児のすこやかな発達が保障されるために必要な活動として(1)子どもの周囲の環境に対する自主的な探索活動である「遊び」を最も重視したが、その他に、(2)「描画」、「お話」、「うた」、「遊戯」などの身体表現等、子どものイメージの形成とその表現活動、(3)目的をもち過程だけでなく結果も重んじられる「栽培」などの労作活動も重視した。また、(4)手で操作する中で、外界の秩序を体感していける「恩物」(=教育玩具)による活動、(5)読み、書きの活動も6才までにやさしい絵本が読みとれる水準までを、幼児期にふさわしく、必要な活動として位置づけていた。本研究では、以上の5点について、モンテッソ-リはフレーベルから何をどう引き継ぎ、また発展させたのか、両者の保育内容、方法の異同点はどのようなものかについて明らかにすることを試みた。その結果、モンテッソ-リは、(1)、(2)、(3)については、フレーベルの主張と実践を大きく是認し、受けとめつつ、(4)、(5)について研究と実践を深めることを自己の使命としたと思われる。(1)、(2)、(3)の活動の位置付けの弱さを、キルパトリック、デューイをはじめとする批判者から追求されるたびに、講演や論文によって弁明しているが、モンテッソ-リは、自己の研究と実践の的を(4)と(5)の深化にしぼっていたため、(1)〜(3)については無視も軽視もしていないとう弁明と、実際に「子どもの家」の実践も(1)〜(3)を取り入れていることを示すにとどめ、(1)〜(3)の研究と実践に深く足を踏み入れることは行っていないし、その余裕がなかったと判断できる。 幼児教育界では今日も、遊びと学習の内容と方法をめぐってさまざまな模索が続いているが、フレーベルとモンテッソ-リの遺産を正しく受けとめることの意味を確認するため、今日の「早期教育」の実態や、学校教育の問題状況についても研究を行った。 これらを基盤として、一つの論文に集大成したいと考えている。
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