研究概要 |
1 研究方法 ●研究対象としては,戦後を6期に区分し,小学校の社会と音楽,中学校の国語と社会の教科書の中から,発行継続年数や発行部数などの点から,その期を代表すると見なされるもの(各教科・各期ごとに数種類)とした。 ●分析研究の視点としては,著作・編集者側からの視点と使用者側からの視点を,教科や主題に即して選択した。そのため,教科書内容の精査・分析のほか,当時の公文書や雑誌,回顧録,教師用指導書などを通覧したり,当時の関係者から聞き取り調査を行ったりして,編集意図や時代的背景の解明につとめた。 ●こうして得られた知見のうち,この研究課題に適合したものを寺崎,駒込,吉村,奈須,安池,坂本がそれぞれ分担してまとめ,研究報告書『戦後教科書における海外認識の研究』を作成した。 得られた知見の概要 ●戦後初期の教科書は編集の意図や論議の状況・雰囲気などがそれぞれに個性的で,「国際理解」への視点も,「貿易」を通じて見る立場や近代の「歴史認識」を主軸にする立場など多様であったが,第3期(1960年代)になると,それぞれの個性が薄められる。アジア諸国に対する姿勢も「植民地支配・戦争への反省と民主化希求」から「開発援助」重点へと転換していく。これと同時に,自然や生活による地域区分から国や地域による区分に転換し,開発と近代化をたたえるトーンが強まるようになった。 ●国語においては,初期の「西洋偉人伝」は次第に姿を消して,戦争や差別などを扱った「心の痛み」教材が登場するが,アジアの子どもの姿は平成年間になって初めて登場した。
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