研究概要 |
八重山大阿母(ホールザ-)は、1700年代以降、緊急避難的な状況で嫁継ぎがあるが、山陽氏にかかわる母から娘への継承がなされている。そして、これが先代ホールザ-まで続くが、先代に対する評価は別れる。評価の良し悪しはその業績を重視するか、継承のあり方を考慮するかで変ると思われるが、ホールザ-の資質がこの時点で変化しており、この職に対する政治、経済的裏付けが完全に消滅した段階で起きた、一連の動きとしてとらえることができると考えている。この動向は現ホールザ-に及び、それゆえ長栄氏の系統といった「正当な血統」に帰属する人物にも関わらず、限りなくシャーマン的な存在になっていると推測される。君南風(チンベ-)に対して、先代まで村当局のかなり強力な支持があり、現在もそれが僅かであるが続く状況と対照させた時、その可能性はかなり高い。久米島のノロについても同様の見解がえられると考えている。 久米島では、チンベ-はプリ-スト的な存在で、神がかりの要素は資質として必要性がなく、継承は特定の家筋帰属が条件であることが確認された。ただ、そこに神の意志という要素が暗示的に存在している。ノロについては、現在,具志川、儀間、城の3名しか継承されていない。ノロの継承は城ノロのように完全な父系血縁から、様々な継承を行なっているものまで雑多な状況である。理念としての家筋による継承観念は強いが、城以外では、神の意志による継承という考えがチンベ-より明確な形で表れる。家筋継承という原理の前提に、神からの承認を求めたいという感情が大なり小なり存在しているのである。石垣島では人々の意識の中でこれがさらに強くなっており、シャーマニズムを顕在化させる力になっていると思われる。
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