1700年以前(近世初期)における京都周辺の大名を中心とした文芸圏の研究である。 この研究は、数年にわたって申請者が、進めてきた研究である。その成果は、平成8年度科学研究費補助金、研究公開促進費の交付を受けて『近世大名文芸圏研究』(八木書店 平成9年3月)に発表した。このうち、本申請による成果は、第1部、「近世前期京都周辺大名文芸圏」の「佐川田昌俊と永井家」「資料1高階尚俊歌集」「資料2 立教大学図書館蔵「「詠百首和歌」」「加藤磐斎と板倉家-高梁市立図書館板倉家文書を中心に」の各論考である。「研究成果報告書」には以上の4編を収めた。又、本補助金を受けた旨を記載したあとがき、及び出版の奥付も付載した。 「佐川田昌俊と永井家」は、近世初期を代表する歌人であり、又近衛家や小堀遠州、松花堂昭乗などと交遊を持ち寛永文化圏の代表的風流人であった佐川田昌俊が、京都所司代として京都の文化政策の中心人物であった板倉重宗の家臣として如何なる役割を担ったかを考察したものである。「資料1高階尚俊歌集」と「資料2 立教大学図書館蔵「「詠百首和歌」」は、いずれも佐川田昌俊の歌集の翻刻と紹介である。前者は昌俊の30歳代のものであり、後者は晩年期のものと思われる歌集である。「加藤磐斎と板倉家-高梁市立図書館板倉家文書を中心に」は、備中、松山藩板倉家の所蔵文書の調査を行い、板倉重宗時代の京都所司代及び亀山藩主としての文芸活動を、客分として板倉家に招聘された国文学者加藤磐斎との関連を中心にまとめたものである。 以上の研究から近世初期の京都における大名(武家)と公家の関係を基軸とする文芸の構造の一端が明らかになった。
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