研究課題/領域番号 |
07610452
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
英語・英米文学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
今泉 容子 筑波大学, 文芸・言語学系, 助教授 (40151667)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | ブレイク / 複合芸術 / 足 / 女性 / 自己 / アウトライン / 衣 / 性差 |
研究概要 |
ブレイクの複合芸術(詩と絵画が合体した形態)において「足」がどのような意義を付与されているかを解明した。ブレイクの「ノートブック」、『アルビオンの娘たちのヴィジョン』、『ユリズンの書』、『ミルトン』、『ジェルサレム』を考察対象として、つぎの4点をあきらかにすることができた。 1.ブレイクのノートブックには、「足」だけをデッサンしたページが何枚かあることがわかった。やはり「足」に特別な執着をもっていたと考えられる。 2.ブレイクが主張した「明確なアウトライン」という絵画理論は、「足」を描くときにはっきりと実践される。「明確なアウトライン」の輪論とは、劣った絵画が「色」を主張するのにたいして、すぐれた絵画は明確なアウトラインをもつというもので、「線」に優位を与える理論である。その明確なアウトラインが一番はっきりと表現されるのが、「足」の描写においてである。「足」がもつ明確なアウトラインは、ブレイクの芸術家としての優位を主張するものである。 3.それと同時に、「足」の明確なアウトラインは「真の自己」を表象する。詩において重要な意味をもつ「真の自己」と「偽りの自己」の区別は、イラスト(絵画)における登場人物の「足」の描かれかたを見ることによって判明されることが、本研究であきらかになった。登場人物が「偽りの自己」から「真の自己」へ転換するときに、それまで衣でおおわれていた「足」が本来の素肌の力強いアウトラインを露出するようになる。「足」が素足としてあらわになったとき、「真の自己」が実現するのである。「明確なアウトライン」で描かれた「足」に注目することによって、その登場人物が称賛される人間か、非難される人間か、言い当てることが可能なのである。 4.本研究の最大の発見は、「足」にブレイクのジェンダーの意識が表れていることを突き止めたことだろう。男性の登場人物と女性の登場人物の「足」の描かれかたは、あきらかに異なっている。女性の登場人物の「足」のほうが、衣でおおわれている割合が圧倒的に高い。つまり、「偽りの自己」を表象している割合が高いのである。これはブレイクが詩においてほとんどの「女性」(ジェルサレムという女性を例外として)を人類の堕落の根源ととらえることと呼応する。「足」はブレイクの性差の意識とも深くかかわっているのである。 以上の研究結果は英語論文にまとめ、投稿準備中である。
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