研究概要 |
本研究では,機能文法、情報構造理論、及び、関連性理論の観点から、談話における照応表現の機能的・語用論的特性を明らかにしながら、談話照応の原理を解明する事、および談話における照応表現のデータベース作成をその目的として掲げた。具体的な研究成果の概要は次の通りである。 1.照応表現の機能と処理労力の関係、談話照応の解釈メカニズムと関連性理論との関わりを考察し、代案として関連性理論の枠組みに依り「談話照応に関する関連性条件(Relevance Condition on Discourse Anaphora)」を提案し、その成果をKato (1996c)[International Journal of Pragmatics VI所収]として発表した。 2.談話照応の一種である「橋渡し指示(bridging reference)」の解釈に関して、定名詞句表現の談話における意味的・語用論的機能を関連性理論の枠組みを用いて新たに位置づけ、「橋渡し推論方式(Bridging Inference Procedures)」、および「橋渡し指示に関する関連性条件(Relevance Condition on Bridging Reference)」を提案し、その成果を加藤(1996a)[上越教育大学研究紀要第15巻第2号所収]、Kato (1996b)[English Usage and Style vol 13所収]、Kato (1996c)[International Journal of Pragmatics VI所収]として発表した。 3.話し手・聞き手の立場から英語の談話をとらえ、情報構造理論の枠組み依って文の単位では現れにくい受動文の機能を分析し、受動文は極めて意図的な構文であることを主題と動作主をどのように位置付けるか、という観点から明らかにし、加藤(1997)[印刷中:上越教育大学研究紀要第16巻第2号]として発表した。 4.関連性理論の枠組みによって談話における疑似分裂文の機能を明らかにし、疑似分裂文は最適の関連性を満たさなければならないことを規定したRelevance Hypotyesis for Wh-cleftを提案し,Kato (1997)[ms.]として発表した。 5.照応表現、橋渡し指示表現、情報構造、関連性理論等に関わる例文を収集し、データベース化した。
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