研究課題/領域番号 |
07610488
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
仏語・仏文学
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
寺田 光徳 弘前大学, 人文学部, 教授 (10155468)
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研究期間 (年度) |
1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1995年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 十九世紀フランス文学 / モーパッサン / ド-デ / ゾラ / 梅毒 / 天然痘 / 語り |
研究概要 |
1.十九世紀後半における医学、特に梅毒に関する病理学的知識の概略及びその梅毒に実際に冒された文学者、あるいは文学作品中での描写に関しては、実に広範な実証的研究をした歴史家クロード・ケテルの『梅毒の歴史』という成果に基づいて、研究論文やジャーナリズムの記事を分類した。案内役としてきわめて有用だった上記書は今後も他の視点からの研究に役立つと思われる故、本研究の副次的産物として拙訳にて出版される予定である。 2.上記の病理学上の概略的知識の整理と同時並行して進めていた、文学者の梅毒罹患例から、すでに研究成果を「病気と文学--モーパッサン『オルラ』の場合」と「病気と文学(2)--ド-デの『ラ・ドゥル-』と『サフォー』」として発表しているが、同じ自然主義期の作家であっても前者のモーパッサンは存在論的なレベルにまで病気の影響を受けて、作品の語りに革新的な展望をもたらしているが、それに対して後者は相対的に表層のモラル面から当時の思想を反映しているだけである。これは同時代の作家たちが「梅毒」を単なる病気でなく、「恥の病」としての社会的、歴史的な病気として意識的、無意識的に対処したからこそこうした受取方の差異が作品の上に大きな表現上の差異となって現れてきていると十分納得された。 3.病理学的思考が文学作品に大きな影響を与えることがあるとすれば、単に主題(テーマ)に病気を取り上げるだけにとどまらずに、語り(ナラトロジー)の面でも具体的な、説得的な価値を持つことを示し得なければならない。そこでその典型例を梅毒とは異なる「天然痘」を扱ったゾラの『ナナ』で分析してみた。ゾラは私生活上で梅毒や天然痘を患ったわけではない。だが彼が当時の科学ないし病理学思想をいち早く、直観的に捉えてそれを見事に『ナナ』という作品に活かしていると明らかにしえたことは、今後の自然主義文学研究にも有意義な視角を提供できたと思われる。
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