研究概要 |
「科研費最終研究報告」所収の収集データ以外に,以下のような知見を得た. 1.ドイツ語の発話文(特に「文意味」)は,「文意味構造(「文意味」の枠組み的構造)」に基づき,(「文意味的構造」に並行する)統語構造に,動詞および他の語句が挿入されて生成される.この「生成」に関わる「規則体系」を「統語的意味的生成メカニズム」と呼ぶ. 2.個々の動詞と統語構造の関係を,動詞の観点から分析する「統合価(Valenz)理論」は,現実には,個々の動詞の「意味用法(Bedeutungsvariante)」と統語構造の関係を扱っている.動詞という形態ではなく,「意味用法」を出発点として,動詞と統語構造の関連を眺めるならば,どのような統語構造に基づき,どのような語句によってどのような「文意味」が表示されるかという一般性のある問題提起が生じる.動詞の個別的「結合性」を問う視点から「文意味」形式を問う視点への転換である. 3.「文意味」の,「文意味構造」に基づく形成を問う場合,発話文の「容認性」が問題なる.「容認性」とは,統語構造に挿入された具体的な語句の意味的総体に関する問題である.これは,動詞を中心としたシンタグマ的視点から,文意味構造を中心としたパラディグマ的視点(動詞以外の項に挿入される語句間の問題)への移行を意味する.この方法論は,パソコンによる,一定のコーパスからのデータ検索がなくしては不可能なものである. 4.「容認性」の判断は,現実界(の人間による認識)あるいは社会文化の在り様と関わっており,「容認性」の研究は,現実界あるいは社会文化のどのような事象が人間の伝達にとって有意義であるかを明らかにすることにもなる.
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