研究概要 |
本研究は筆者が従来から行ってきたシンタクス研究を,単に統語論的だけでなく,従来ほとんど古高ドイツ語について行われていない(述語および補足語の)意味論的関係までを視野に入れ,統語論的・意味論的にヴァレンツ分析することであった。古高ドイツ語という古いドイツ語のシンタクス分析を現代ドイツ語研究と同じ方法で行うことによって,現代ドイツ語と歴史的ドイツ語の比較が可能な分析結果を提供することが出来るわけである。その為に今回はIsidor, Tatian, Otfrid, Notkerのテキスト分析をコンピュータを用いて次の手順で行った。 1.現代言語理論に基づく古高ドイツ語(あるいは中高ドイツ語,初期新高ドイツ語)を代表的学者の研究方法と成果を吟味した。 2.古高ドイツ語のテキストIsidor, Tatian, Otfrids Evangelienbuch, Notkerをすべてコンピュータに入力するために資料整理を行った。 3.テキストをコンピュータに入力し,各テキストについて動詞を中心として用例群を収集し,文の構成要素であるSyntagmaに各文を分解した。1で考察した最適な理論を踏まえ,このすべてのSyntagmaに対して,morphosyntaktischな分析に基づいて,統語論的な分析結果の分類記号と意味論的表示を付した。 4.3のヴァレンツ分析結果を基礎として,補足語に対して意味論的分類を記入し,分析結果をヴァレンツモデルとして記載した。この意味論的ヴァレンツ分析による資料は古高ドイツ語の文章構造の基礎構造を明らかにすることに寄与することになるであろう。
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