研究概要 |
われわれは,平成4年からこの課題に取り組んでいるが,平成6年までの3年間を資料編作成の期間に充て,各種の文体から選んだ資料(原典とその翻訳書)を対象に英語とフランス語の過去を表す動詞形式の比較研究のための資料を収集してきた。その結果を利用して,平成7年から理論的考察を開始し,まず英語学とフランス語学の分野における先行研究をいくつか取り上げて,比較研究のための枠組み作成のために必要な用語や概念の整理を行った。その上で資料編で得られた数値を基に,両言語の各時制形式が持つ意味を整理し,両言語の特性として以下の点を明らかにした。 (1)完了/非完了の対立はフランス語の過去時制体系においては義務的であり,最も大きな軸をなしている。 (2)英語の進行形は有標の文法形式で,ステージ化という文アスペクトを変更する働きを持つ装置である。 (3)両言語に,随意的に用いられてある意味を表現する有標形式が存在する。 以上の結果を参考にして,我が国ではフランス語を学習する学生の多くは先に英語を学んでいることが多いという事実に着目して,外国語教育上の提言を行った。たとえば,英語の進行形を踏まえてフランス語の半過去形を教えるようなことは,半過去形の持つ未完了という一般的性質を見逃すことになるのではないか。
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