研究概要 |
わが国の大規模株式会社に見られる特徴は、第1に、株主より従業員の利益を重視した企業経営、第2に、環状的株式相互保育による法人企業支配の浸透の2点に集約できる。これらの特徴は、バブル経済崩壊に伴い、若干緩和したとはいえ、欧米の企業システムに比べると、閉鎖的で特殊な構造的要因と受け取られかねず、改善を要する課題として位置づけられる。これらの課題に的確に対応するためには、監督・監査機能の細目を類型化し、それらに対応した機能的機関権限分配の法的再編を図り、経営監督機構の充実を具体化する必要がある。 監督・監査機能の細目は、(1)advice,(2)cousel,(3)monitor,(4)consult,(5)review,(6)supervision,(7)audit,(8)invesitigation等に類型化され、それらは、わが国の会社法上、(1),(2)が主に取締役会、(7),(8)が監査役(会)、(3)ないし(6)がその両者に係る機能として分類ができる。これらの機能を的確に作動させるためには、single-board systemを採用しながら監督機能の再編を図る米国法制を参考にしつつ、ドイル法制のtwo tier systemのメリットを継受できる方向が模索される。具体的には、一方では、取締役会内に、機能細目(たとえば(5),(6)等)に応じた委員会組織を導入し、必要に応じて監査役(会)との連携を図ること、他方では、(7),(8)の機能を充実させるために、監査役会・社外監査役の権限の強化・明確化や監査制度を補強する補助機構の設置、等の検討が肝要となる。さらに、株主による最終的なcheck & control機能を充実する必要があり、そのためには、情報開示規制の徹底および単独あるいは少数株主の監督・是正権の拡充を図る必要がある。これらにより、国際的市場メカニズムに適合する透明性の高いコ-ポレート・ガバナンスを達成することが重要である。以上の諸点は、基本的には、持株会社にも当てはまる。
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