アメリカの預金保険制度は、金融機関に対する信頼の維持と小口預金者の保護を目的として1930年代の大恐慌の際、1933年銀行法により暫定的制度して発足したのが始まりであるが、預金保険公社(FDIC)は連邦機関として金融機関に対する規制権限、検査権限に留まらず、やがて金融機関の破綻処理に際してコモン・ロ-上、政策上、幅広い権限をもつようになっていった。80年代の金融機関の破綻数の増加がこのことを最も決定づけたのであるが、規制当局の権限強化を盛りこんだ1989年FIRREA(金融機関改革復興執行法)を経て、このような傾向はさらに強まった。それは、12U.S.C.1821(K)の解釈をめぐるFDICの主張に顕著に表われている。 しかしまた裁判所の判断には、取締役の責任を議論する際にも取締役の防衛に言及するものや、当局の規制のいわば不行届きを根拠として、責任賠償を否定する判決もでてきており(ノ-デューティー・ルールの不適用)、FIRREAの中で破綻金融機関の経営者の注意義務違反に基づく責任を認めた1821条K項は依然として議論の渦中にある。
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