研究概要 |
1990-1993年の長期時系列資料(年次データ)を用いて,次の順序で,貨幣需要関数の推定とその経済解釈に関する研究を行った。 1.関連する長期時系列データの再整備を行った。実質国民総生産,諸利子率,貨幣ストックやその構成要因などのデータベースの作成をした。 2.貨幣需要関数は通常の所得と利子率で説明する式に特定化し,貨幣供給は貨幣ストックとハイパワード・マネーとの定義式から導き,金融制度の変化を示す指標として預金・通過比率を戦略的に導入した。 3.上記より得られる貨幣ストック(M1とM2のそれぞれ)に関する同時方程式体系を2段階最小2乗法と最尤法によって推定した。戦前期(1900-1943年)と戦前期(1947-1993)に分ける場合と全期間の場合のそれぞれについて推定し,統計的諸検定を行った。 4.その結果として,いくつかの構造変化を示す係数変化がみられるが,貨幣需要関数についてみれば,その変化は利子率については顕著にみられるが,所得については安定的で,所得弾性値はほとんどの場合(期間)についてほぼ1に近い値をロバストにとることが分かる。 この結果は,財政政策(公共投資の増減)によるマクロ政策の有効性を支持しないものとなる。
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