研究概要 |
本報告書は,6つの章からなる.第1,2章は,1993SNAの系譜,特徴及び主要カテゴリーの説明に充てられる.第3章は,1968SNAと1993SNAの勘定構造の相違について検討する.国民経済計算と複式簿記の記録方法は,ともに複式記録によるもので類似しているが,決して同じ記録に基づくものではないという指摘がステュ-ベル(G.Stuvel)等により行われているように,1968SNA体系と簿記の体系は必ずしも同じ記録方法に基づくものではない.これに対して,1993SNAの「「体系」で使用される勘定規則と手続きは,企業会計で長く使用されてきたものに基づいている.伝統的な複式記入の簿記原理は,経済会計あるいは国民経済計算の基本公理である.」の記述に見い出されるように,1993SNAでは,複式簿記の原理に基づき記帳が行われているわけである.このように,1968SNA体系と1993SNA体系では異なる勘定原理に基づき記録が行われるが,第3章では,現行体系と改訂体系の勘定原理の相違を詳細に検討する.また,1993SNAでは,新たに統合経済勘定形式で経済循環の表示が行われている.この表示方法は,複式簿記の考えに依拠しながら作成されたものであるが,その作成原理を明らかにする.第4章では,1993SNAの勘定構造を,勘定行列および統合経済勘定の表示形式を利用しながら明らかにする.第5章マクロモデルの章では,経済循環を表示する種々の勘定行列に基づき,生産物市場,貨幣市場,労働市場,証券市場の各市場を均衡させるマクロモデルが作成される.また,SNAは,世界各国がその各集計値を相互比較することのできる唯一の基準を与える統計的フレームワークであるが,第6章では,付加価値,国民所得などのマクロ経済指標を国際的に共通の尺度で比較する方法が検討される.
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