研究概要 |
研究計画に従って,日本の非営利団体(NPO)のデータを集計し,その特徴を把握するとともに,政策対応を検討した。その結果,次のことが明らかとなった。 1.NPOの定義において「非営利性(非分配制約)」が特に問題となるが,非営利性とは「収益をあげてはならない」ことを意味しない。 2.日本のNPOの特徴として,(1)公益法人として法人格を持つ団体と,法人格の無いいわゆる草の根の市民団体が伴存しており,法人格の取得が困難であること,(2)活動領域に偏りがあること,(3)法人格の有無にかかわらず収入源に寄付金が極端に少ないこと,(4)法人格のない団体は規模が小さく,経営が困難であり,社会的な信用を得にくいこと等がある。 3.今国会で成立した「特定非営利活動促進法」(以下,NPO法)により,市民団体は法人格をこれまでより容易に取得できることとなった。しかし,活動分野が12に限定されていることはNPOの活躍の場を狭めることになりかねない。また,政府や自治体等からの助成金受給や業務委託の条件としてNPO法による法人格取得が義務づけられたり,会計書類の整備が求められたりすることにより,財政規模の小さいNPOの負担が増加し,活動が制約されるおそれがある。 今後は,開かれた市民社会の発展のために,NPOに対する税制上の優遇措置の実現等の社会的支援が必要である。公益法人が陥っている「非営利の失敗」を,適切な支援によって市民団体が克服できる可能性がある。
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