国際マクロ経済学において、総供給関数の果たす役割について解明したいと考えまして科学研究費を申請致し、1995-1996年度と2年間に亘り研究致しました。 総供給関数をどのように定式化したらよいかについては、過去の研究の蓄積を参考としていろいろと考えました結果、効率賃金モデルを開放経済に応用し、そして為替レートと物価水準の期待を内生化した小国モデルを構築し、幸いにもその誘導形を導くことができました。その結果、完全資本移動性下のマンデルの結果、すなわち金融政策は国内景気対策として有効であるが、他方財政政策は無効であるという結果に対して、むしろ金融政策が無効になり、また財政政策にいたっては縮小的な効果を及ぼすことがあることを示すことができした。金融政策が無効となることにつきましては、金融政策により為替レートが減価し、物価水準上昇の期待から将来の為替レートも減価すると期待され、したがって利子率は不変のままでは、Lai(1993)と同じく供給が反応しないことがわかりました。しかし財政政策は名目為替レートを増価させることにより物価水準を下落させ、その結果実質為替レートをむしろ減価させることが示されました。効率賃金モデルに基づく総供給関数は実質為替レートの減少関数となることが証明されているので、財政政策はマンデルの結果よりもなお悲観的なものとなってしまうことを示すことができました。 さらに、開放マクロ経済モデルにおいては、貨幣市場の均衡条件式の定式化によっても総供給関数を含むモデル分析の結論が変わるのではないかと思いまして、いろいろな貨幣需要関数の定式化を試みて研究致しました。その結果、為替レート水準に感応的な貨幣需要の下では、為替レートのオーバーシュートは減殺されることを証明できました。
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