研究概要 |
研究開発(R&D)投資が国内企業と外国企業からなる国際的産業組織の自発的形成にいかなる効果を与えるかを研究した.この研究では,分析を簡単化するために,両企業の複占の3段階ゲームモデルを用いた.両企業は第3国市場に生産物のすべてを輸出する.つまりその市場で両者は競合関係にある.第1段階では,自国政府がその厚生が最大となるように輸出補助金(税)を決定する.そして第2段階では,2つの企業は生産コストを引き下げるために各々R&D投資を非強力的に決定する.更に,最終段階では,それらが非強力的に産出(輸出)量を決定する.両企業は第2と第3段階ではク-ルノ-的に行動するものと仮定する.このモデルでは情報は完全で,しかも不確実性は存在しないものとする.また,各企業が行ったR&D投資で獲得した技術や知識はある比率β(0≦β≦1)で他企業にスピルオーバー(流出)するものと仮定する. 研究の結果,例えば以下の分析結果を導くことができた. 1.R&D投資のスピルオーバー比率が十分に低いと,もし自国企業のR&D投資が外国企業のそれに較べて相対的に多いならば,外国企業は市場から退出し,自国企業の市場独占が起こる. 2.R&D投資のスピルオーバー比率が十分に高いと、両企業のR&D投資の大小に係りなく,産業組織は両企業の複占体制となる.つまり2企業が市場に併存する. 3.自国企業の独占以外のケースでは,スピルオーバー比率がかなり低いか,または非常に高い場合,自国の輸出補助金は自国企業の産出(輸出)量を増加させ,外国のライバル企業の産出(輸出)量を減少させるであろう.
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