本研究は、NAFTA(北米自由貿易協定)で一大争点になった「貿易と環境」問題を、途上国と先進工業国との貿易・投資の自由化に伴う新たな国際的調整問題として事例研究したものである。研究は、主として北米3カ国の経済関係を分析するとともに、NAFTAにおける環境問題に関する協定を検討した。 その結果、(1)NAFTAには環境基準の緩和による投資誘致策を回避する旨の条項があるが、国際的な環境基準を維持するための財政的・人的保証は各政府の自主性に委ねられていること、(2)「環境協力に関する北米協定」なる補完協定があるが、その内容は環境に関する情報提供と協力にすぎないこと、(3)NAFTAにおける環境問題解決の基本的立場は、メキシコの経済発展とそれによる環境保全技術・設備の輸入とその拡大にある。(4)しかし、このような政策でメキシコの国内・国境の環境問題が解決されるのかは、今後も大きな課題となる。以上の諸点が明らかになった。 概して、NAFTAそのものの性格に関する研究に比重が置かれたが、将来的には国境を跨ぐ環境問題の現地調査を踏まえて、「貿易と環境問題」をいっそう追求する必要がある。
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