研究概要 |
第1論文(国内・輸出カルテル形成の効果)では,国内または輸出カルテルの形成は,輸出需要が国内需要に比べて価格弾力的であるときには,競争均衡に比べて国内厚生を引き下げる傾向があることがわかった.だが,こうした静学的な効果に対して,費用削減的技術開発投資を考えるとカルテルの形成はそのインセンティブを高めるものの,厚生の観点からすれば過剰となる傾向があることが明らかとされた. 第2論文(非経済目的とバグワッティの政策割当原理)では,数量競争下の国際複線産業でバグワッティの政策割当原理の拡張を試みた.与えられた非経済目的を最小経済費用で実現する次善の政策は,通常輸入関税の賦課を必要とするが,完全競争下のバグワッティの政策割当原理が教えるように目標変数に直接影響を及ぼす政策変数に対しては輸入関税よりも高いウェイトがおかれるということが明らかとされた. 第3論文(自主的輸入拡大と政府のコミットメント)では,自主的輸入拡大を実現する具体的な政策手段として国内販売税と輸入補助金を考え,政府がこうした政策に企業の価格決定に先立ってコミットできなければ,外国企業が戦略的行動を通じて均衡に影響を及ぼそうとする誘因が働くことが明らかとされた.特に,国内販売税を用いる場合には,外国企業の価格決定は混合戦略となり,輸出自主規制でかつて分析されたような均衡となる.また,輸入補助金の場合には,均衡が存在しなくなることが明らかとされた.
|