研究概要 |
本研究では,主として金融市場における不確実性や不完全情報に注目し,それらが金融機関の行動,資金配分,およびマクロ経済変動にどのような影響を及ぼすかを検討した. 1.「金融システムと情報の理論」では,不完全情報下の資金市場および金融仲介機関(銀行)の役割など,貨幣金融経済に関わる諸問題を理論的,歴史的,および計量的に分析した.具体的には次のような問題を検討した.(1)日本の金融制度の特徴として指摘されるメインバンク制度も,情報の問題を解決する一手段と考えられる.一方,情報の不完全性はメインバンクに独占的な立場を与えたり,また独占からのレントを入手しようとする過剰な情報活動が行われることになる.(2)銀行は流動性リスクに直面しているため,預金市場において預金者が健全な銀行と不健全な銀行とを明確に識別できない場合には,銀行取り付けや金融パニックが起き,金融システムが不安定化する可能性がある.(3)昭和2年の銀行恐慌を計量的に分析し,取り付けの原因がモラルハザードにあることを明らかにした. 2.「銀行の自己資本貸付とマクロ経済変動」においては,企業の自己資本や債務額が投資・生産と強く関連し,実物経済を不安定化する可能性があることを示した.
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