土地に対する固定資産税の平成6年度の評価替えは、地価公示価格の7割水準を基準として行われた。このため東京をはじめとする大都市地域では、評価額が前回の平成3年にくらべて10倍をこえて上昇する所も多数現れ、それにつれて不服審査請求も、全国で1万7千件をこえて提出された。本研究は、この不服審査請求がどのよう論拠をもとに行われたかを調査したものである。調査は東京特別区内および大阪市内で面接によって行われた。得られた結果の主要な点は、以下のようなものである。 まず不服審査請求者があげたもっとも一般的な論拠は、7割評価がたんに自治省の通達によって実現された点である。7割評価は、一種の増税でありその効果は税率の引上げと変わりない。それが議会の審議と議決を経ず、単なる通達で行われたのは違法であるという主張が非常に多い。 ついで、地価公示価格の7割に定めた根拠が不明確であるという訴えが多い。地方税法は「適正な時価」と定めているが、それは公示価格そのものではないか、また、地価公示価格の7割が適正な時価とすれば、平成3年評価はそれより低いから違法な評価であったといわねばならないのではないか、等の主張がなされている。 この他、都市計画道路予定地の評価が高すぎる、都市計画法や建築基準法等による建築制限が評価の上に十分に反映されていないという論拠も多数上げられている。 なお、不服申し立て者が一番心配している点は、負担調整措置は単なる行政運用上の措置であり、国の官僚自由裁量により何時でも廃止できるという点であ。
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