研究概要 |
ベンチャービジネスは一般的に新製品・サービスを社会に供給するために、創業行為のすべてが独自に開発されるべきものと,社会的にも創業者自身に思われがちとなる.その結果,必要な知識は,創業者自身が試行錯誤に獲得するか,他者との交流によってその都度場当たり的に会得されるのか,の断片的な知識取得に陥りやすくなる. このような形の相互学習は,創業者自身にとって不利益をもたらすばかりではなく,社会的に利用可能な知識を再利用できなくなる,という問題をも生み出している.この問題を解消するためには,まず実態を調査する必要がある.今回は,創業者自身から見た相互学習よりも,創業者/創業希望者に向けて知識を提供する機関に関して実態調査を行った.特に今回は,地域に密着し,既に中小企業との間での相互学習を繰り返し,そして長期間に渡り実施している商工会議所を対象とした.また,商工会議所が,創業講習を平成7年度より実施する体制をとることになったことも選択の理由としてあげられる. アンケート調査から,商工会議所の創業支援講習には,(1)受講生の確保の難しさ,(2)創業ノウハウを教える講師の不足,そして(3)受講の成果の測定の難しさという問題があることが分かった.相互学習の視点から見れば,創業ノウハウを持つ人を見出すことが第1番目の条件となる.創業ノウハウを持つ人を講師や相談の窓口に配置できれば,ノウハウを得るために,強い創業意欲を持つ創業候補者が集まってくる.これらの人々が知識を習得すれば,創業という成果がより多く現われる.その上,その創業を学習材料にして,ノウハウの拡充に努めることも可能である,さらに,その創業を見て多くの人々が集まるという好循環が出現する.この意味からして,創業講習を行える人々を,いかにして確保するか,あるいは育成するかということが,創業活動の活性化のための最重要な課題となる.
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