研究課題/領域番号 |
07630108
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
経営学
|
研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
須貝 栄 東京国際大学, 商学部, 教授 (40154439)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1997
|
研究課題ステータス |
完了 (1997年度)
|
配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1997年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
1996年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1995年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 認知科学 / コミュニケーション / 異文化研究 / シムログ理論 / 公理論 / 混合理論 / データ・ベース型コミュニケーション / イメージ / 用地取得交渉 / 相互作用 / 一体化 |
研究概要 |
平成9年度は、交渉チームにおける内的合意形成過程に関する本研究の最終年度であり、前2年度にわたる文献調査と実証調査の結果を統合化して、研究課題の総括を行なった。 1.内的合意形成過程を研究する論理枠組み:文献研究を通して、交渉意思決定に関する公理論的アプローチ(ゲーム理論)、認知科学的アプローチ(社会心理学)、これら二つの混合アプローチ(ノースウェスターン学派)も検討した。この理論検討の結果、小集団における社会的相互作用に焦点を置くと共に、行動だけでなく価値観についても多層的に記述・分析するシムログ理論は、本研究に最適の理論枠組みであると確認できた。 2.実証調査の結果:小規模ながら政府特殊法人を調査対象とした実証調査を行うことができた。その結果は以下のごとくである。 (1)交渉における内的合意形成過程は、相互作用に基づいた一体化が決定要因となっている。交渉担当者間においては、職場における先輩・後輩間での相互作用とそれから形成される一体感、また交渉担当者と被交渉者の間でも共通の解決課題をめぐる相互作用とそれから育成される一体感が、交渉の成否を決定する要因であるとインタビュー調査からも結論された。一体感は、その後の研究発展により、価値観の伝達を包容したコミュニケーションによってさらに促進されると確認された。 (2)上記の発見から、交渉は個人対個人の駆け引きゲームという一般の先入観よりはむしろ、交渉担当者側内部も被交渉者との間の関係においても小集団の単位で交渉を行っていることが確認できた。さらに、「一体感」の形成がコミュニケーションによって促進されるならば、そのスタイルやシステムは国民文化によって大きく影響されているという仮説が立論された。この仮説は、インタビュー調査中に交渉担当者側から出されたものである。 (3)交渉の際に重視される価値観は、第1に支配-服従、第2に権限受容-非受容、そして最後に友好-非友好の価値次元であった。 (4)当初に計画したパーソナリティ、個人的価値観、職場における業績などのの関係は、人事記録であり社外秘であることから資料入手ができず、実現できなかった。唯一入手できた個人データは交渉経験年数であり、それによる再分析の結果、交渉経験年数10年以上と未満の差で、重視される価値観についてその次元の違いと個人差による変動が大きいことがわかった。 (5)交渉が文化差に大きく影響されているという事実に関して、学術研究例は今だに僅少例しかない。Kozanによる研究例は、文化類型に基づいた交渉モデルとして、相違点を扱う際に強調に重点を置く協調型モデル(日、韓、中、台)、一方で敵対しながら、他方で相互に譲歩・妥協を図る敵対型モデル(英語圏諸国)、そして普遍主義的な原理・規則の助けによって紛争解決を図る規制型モデル(東欧など)を指摘している。そこで、交渉の国際比較を今後の研究課題としたい。
|