米国会計検査院は、連邦政府レベルの財務検査活動とともに、業績検査活動を行なっており、業績評価にかかわる検査活動が大きな比重を占めている。この度の研究ではこの業績検査活動に焦点をしぼり、その導入経過及びその手法に関する研究を行なった。 当初の計画のうち、導入経過に関する内容については、愛知大学大学院博士過程満期退学論文「米国連邦政府の会計検査制度に関する史的研究」(1996年1月提出)に発表した。その要約を示せば、業績検査活動の開始時期については、従来1967年代経済機会法(修正案)の作成にあたり、貧困対策事業のプログラム評価を米国会計検査院が実施することになったことから始まったとされていた。 しかし第二次世界大戦を契機として連邦政府が公社に対する統制を強めようとしたことに端を発したこと、また公社に対する財務検査を会計検査院が実施し、さらにその検査対象を連邦政府機関へ拡げる中で、財務資料の不備から財務検査を実施できなかったことから事実上、業務検査になった経過が見られた。 また、1970年代以降活発になった業績検査概念の変遷及び直近の検査基準の改訂における業績検査概念の変化を考察した結果、行政統制としてのアカウンタビリティ確保と意思決定者への情報提供機能のうち、後者が非常に大きな部分を占めていることが明らかになった。そしてその経過は、一方でチーフ財務官法等によって政府機関の内部監査を充実させつつ、他方で財務検査活動の比重を減らしながら、プログラム評価活動にシフトしていく過程として捉えることができた。 インターネット利用によるGAOの資料収集が軌道にのり、研究が進行中であることも報告できる状況になった。
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