研究概要 |
1階非線形偏微分方程式,2階非線形楕円型及び放物型偏微分方程式の弱解の存在,一意性およびその応用について研究した.特に,最大値原理に基づいて定義される微分方程式の弱解=粘性解の理論及び応用について研究した.以下研究成果を箇条書きにして説明する. 1.非線形放物型方程式Allen-Cahn方程式について,その数値計算への応用およびその相互作用のある無限粒子系モデルにおける相転移の研究との関連において,空間変数の離散近似問題を研究し,本来の連続問題に対するEvans,Soner,Souganidisによる内部遷移層の平均曲率流への収束の結果に対応する結果を離散近似問題の場合に得た. 2.Allen-Cahn方程式のような半線形放物型方程式について,非線形項がsin関数のような周期関数である場合に適当なスケーリングにより解が,すべての等高面が平均曲率流であるような関数に収束することを示した.関連した結果が最近Jerrardにより得られている. 3.Bence,Merriman,OscherのアルゴリズムやGriffeath等による閾値ダイナミクッス法を研究し,その一般化による曲面の非等方的平均曲率流の近似スキームの構成とその収束,また曲面の時間発展の速度が曲面の方向の関数であり曲率には依存しない場合に付いても近似スキームの構成と収束を示した.更に,このような曲面の時間発展に対して,対応するWulffクリスタルに漸近的に相似であることを証明した. 4.Hamilton-Jacobi方程式に対するエルゴード問題あるいは対応する最適制御問題に対するエルゴード問題について,エルゴード・アトラクターの特徴付けを研究し,いくつかの新しい特徴付けに関する結果を得た. 以上の結果はすべて粘性解の概念を本質的に使って得られた.今後も粘性解を利用した偏微分方程式の研究が重要であり,活発な研究が期待される.
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