研究概要 |
近年,エントロピー,フラクタル,カオス,ファジ-,不確定さなどの,系の複雑さを表す概念が様々な分野で使われているが,これらは個々の研究者に依ってその意味するところが微妙に異なっている.複雑さという概念が様々な分野で個別に扱われているといっても,それが持つ科学的意味はほぼ共通なものであるはずだから,それらを統一的に扱う方法が存在するはずである.こうした立場から,情報と深く関わる複雑さの概念を新たに捕らえなおし,それと状態の変化の力学を融合したものとして″情報力学″が提案されている.本研究計画では,情報力学の数理を基に,以下のような成果を得ることが出来た:(1)量子通信理論(光通信理論)における,相互エントロピー,通信路容量,誤り確率,SNRの厳密な定式化(2)状態のフラクタル次元の自然現象への応用(月面のクレーター及び日本の河川の形状の解析)(3)遺伝情報学:エントロピー進化率の遺伝子解析への応用ならびに遺伝子の符号構造の解析(4)量子計算:Fredkinモデルにおける量子相互エントロピーの計算,量子テレポーテーションにおけるチャネルの定式化と量子相互エントロピーの計算(5)経済モデルにおける最適化手法の改善:アニーリングを用いてScarfアルゴリズムの改善に成功(6)二義錯視図形の解析に対称コンタクトプロセスと相互エントロピーを用いた解析に成功(7)ロジスティック写像におけるカオスの尺度に,情報力学の複雑量による定式化と解析に成功(8)確率的探索法における探索効率に複雑量を用いた定式化と解析に成功
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