研究概要 |
1995年9月28日,日本数学会の秋期総合分科会(東北大学)において,「commutator in kleinian groups」という表題で講演した。またその詳細な内容を,1995年12月11日〜12月14日に京都大学数理解析研究所の共同研究事業の一つとして開催された研究集会〔Aanalysis of Discrete Groups〕で,講演した。その内容は,ゲーリング予想を解決し,かつその応用を述べた研究である。また,新たな研究として,コミュテ-タの値分布を調べるため複素力学系の理論を活用して,それをクライン群の研究に役立つことを示した。この問題は,ローゼンバーガ-を初めとして,ヨルゲンセン,ゲーリング等の研究があったが,未解決であった。しかし,今年度のこの研究によって,ゲーリング予想は,完全に解決された。この結果の概要は,まず京都大学数理解析研究所の講究録に発表される,また,今年度の科研費の助成による総合報告として,学術雑誌に投稿の準備をしている。このこの成果を箇条書きして,以下にまとめる。 (1)ともに共役な,2元生成のクライン群のコミュテ-タの評価の精密化ができ,ゲーリング予想が解決した。すなわちコミュテ-タのトレースのモジュラスの下限が,群に依存しない定数であることがわかり,またその下限が最良であることを証明した。 (2)この研究の応用として,クライン群上半空間に作用させたときの,ディリクレ基本多面体の下からの体積評価を可能にした。これはマルグリス定数を与えたことになる。 (3)クライン群の研究のために,コミュテ-タの値分布を調べる方法がある。ゲーリング予想を解決したことにより力学系の理論の応用が可能になり,クライン群の研究に新方向がみえたこと。
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