研究概要 |
マルコフ過程の時間発展の研究において特に成果をあげたのは,空間的一様の場合すなわち加法過程の場合に,過渡的であることを仮定したときにおける,強過渡的と弱過渡的の区別に関する研究においてである.特性関数を用いた再帰的・過渡的の判定条件の中で,Chung-Fuchの判定条件の類似物は,強過渡的・弱過渡的の判定に対しても得ることができること,しかしSpitzer-Ornstein-Port-Stoneの判定条件の類似物は存在せず,そこに本質的な違いがあることを示した.Chung-Fuchsの判定条件の類似物を用いて,強い意味での非格子的を仮定して,5次元以上の加法過程はすべて強過渡的であることを示した.さらに,Chung-Fuchsの判定条件の類似物を用いて1次元の過渡的な安定過程を強過渡的・弱過渡的に分類するのはどのような計算にあるのかを,明らかにした.これ以外に,加法過程に対しては,作用素安定過程の再帰的・過渡的への分類を行ない,また,2つの増加加法過程の分布において,ある時刻における頭の部分の比較から,他の時刻における頭の部分を比較できることを示した. 分担者の1人は進化論への応用を研究し,進化論的に意味のあるマルコフ連鎖の極限分布が有限集団においては特異な性質をもつことを示した.また,クロロフィルの進化の過程をマルコフ連鎖モデルによって取り扱い,その拡散近似を行なった.さらに光合成において重要な意味をもつ金属錯体の分子進化に対してもマルコフ連鎖モデルを導き,その拡散近似の時間発展を論じた.
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