研究概要 |
有限温度格子量子色力学の相転移を、くり込み群によって改良されたゲージ作用および標準ウィルソンクォーク作用を用いた数値シュミレーションによって調べた。 1.純ゲージ系の転移温度T_Cとストリングテンションσの平方根の比のスケーリング則は、ゲージ作用の改良によって大きく改善される。実際、T_C/=の値はN_t=3,4,6格子に対しエラーの範囲で一定である。連続極限でのT_Cの値276MeVは、標準作用を用いて計算された値より幾分大きい。 2.N_F=2のQCDに関し、以下の結果を得た。 (a)クォーク質量の広い領域に渡って転移は滑らかである。標準作用で見られた強い転移は格子のartifactである。 (b)Critical line上のパイ中間子スクリーニング質量や相転移点上のそれは、カイラル転移点に向かって、滑らかにゼロに近付く。このことは、カイラル転移が連続であることを意味する。 (c)カイラル凝縮は3次元のO(3)スピン模型の臨界指数をもったスケーリング則を満たす。これは、クォーク数2のQCDのカイラル相転移次数が2次である事を強く示唆する。 さらに、クォーク数を2から300まで変えたシュミレーションを標準ウィルソンクォーク作用を用いて行い、次の様な相図を提案した。 1. N_F=17に対しては、トリビアルなフィックストポイントしか存在しない。 2.16= N_F=7では、理論はノントリビアルで、クォークは閉じ込められていない。 3. N_F=6でのみ、ゼロ温度でクォークの閉じ込めとカイラル対称性の自発的破れのある、ノントリビアルな理論が存在する。
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