研究概要 |
本研究計画は高エネルギー軽イオン核反応の二種類の反応過程を反対称化分子動力学(AMDと略称)理論を用いて研究するもので、1995年から1997年までの3年間にわたって行われた。二種類の反応過程のうちの一つは(p,p′),(p,n),(^3He,t)等の反応に於ける準弾性散乱やΔ空孔励起等を含む標的核連続状態への反応過程で、他の一つは軽イオン入射による標的核破砕反応である。本研究計画の3年の期間の前半では、上記の二種類の反応過程のうち、前者に重点が置かれ多くの成果を挙げた。後半の期間では、後者の反応過程の研究に重点を置いた。前者の研究では実験データを良く再現する結果を得て、それにより前平衡反応過程の理解が一段と進展した。また更に、陽子の反応断面積の実験データを分析する事によって核媒質中での2核子衝突断面積を決定する研究も有益な知見をもたらした。一方、後者の研究では、軽イオン入射による標的核破砕反応の研究の具体的対象として、標的核の^<12>Cに陽子を入射した場合の破砕反応の研究を、^<14>N(重イオン)を入射した場合と比較する形で行った。重量イオン破砕反応との比較をより明確にするために、陽子入射と^<14>N(重イオン)入射に加えて陽子と^<14>Nの中間の質量の^4He核を入射後とした場合の分析をも行って比較した。研究の結果、陽子入射と重イオン入射の破砕反応には大きな相違がある場合が存在する事が分かり、その原因も詳しく分析された。この研究結果は次のような重要な研究の開始を開拓し促進した。それは中性子過剰核の中間エネルギー領域破砕反応を用いた研究である。具体的にはボロンの中性子過剰核の構造を中間エネルギー領域破砕反応を用いて研究する事が開始された。その結果、中性子dripline近傍のボロンはヘリウムとリシウムの中性子過剰核が結合したクラスター構造を持っているとする考えが強く支持されて来ている。
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