研究概要 |
低エネルギー大気ニュートリノ(E_ν【less than or equal】10GeV)フラックスの理論計算は,ニュートリノの質量および混合角を調べる上で極めて重要である。我々のニュートリノフラックスの精密計算(M.Honda,T.Kajita,K.Kasahara,and Midorikawa,Phys.Rev.D52,4985(1995))とBartolグループ(Barr,Gaisser, and Stenev,Phys.Rev.D39,3532(1989))のフラックスを比較すると,1GeV付近でBGSフラックスの絶対値は我々のフラックスよりも10%程大きいが,フレーバー比(ν_e+ν^^-_e)/(ν_μ+ν^^-_μ)に関しては0.4【less than or equal】Eν【less than or equal】1GeVのエネルギー領域で,5%の範囲内で良い一致をみていることが分かった。 理論計算におけるフラックスの絶対値の不定性を取り除く方法としては、高所におけるミューオンフラックスの理論値と観測値を比較する方法があるが、10%以下の精度でニュートリノフラックスを決定するのは不可能なように思われる。 しかしながら、ニュートリノフレーバー比が理論と観測で大きく食い違っていることは、Super Kamiokandeでも確認された。この食い違いに対する説明としては、ニュートリノにも質量があり、クォークの場合と同様にフレーバーと質量の固有値が違っているというものが最も有望である。 ニュートリノフラックスの理論計算に大きな不定性が含まれるにも関わらず、ニュートリノの質量と混合角について明確な値を引き出すことが可能だろうか。これが最大の課題であるが、一つの解決方法として、方位角分布の比がエネルギーとともにどのように変化するかを調べることが考えられる。現在、この方針で検討中であり、結果が得られるまでには多少時間がかかりそうである。
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