研究概要 |
ストレンジネス-2のダブルハイパー核を生成する方法については,(a)まず(K^-,K^+)反応によりΞ束縛状態を直接生成する確率は1%以下であると算定した。またΞ状態の転換幅についても理論的評価を行った。(b)他方,(K^-,K^+)反応でできる準弾性のΞ状態が99%以上であることに注目し,後者のプロセスからダブルハイパー核を大量に生成できる可能性について,有力な根拠となるシナリオを提起した。すなわち,Ξと核内核子との弾性散乱で核子をはじき飛ばして自分が減速することにより,核への吸収率が,束縛状態生成率より約10倍大きいことが計算により明らかとなった。(c)次にΞと陽子との相互作用でできる2個のλ粒子がそれぞれ核内にとどまる確率を算定することにより,どんな質量数のシングルハイパー核やダブルハイパー核がどのような割合でできるのかを予測した。統計的取り扱いによって複合核から各種の核破砕片が生成される分布を,標的が^9Be,^<10>B,^<11>B,^<12>Cの場合について一連の理論予測を与えた。(d)生成が予想されるシングル,タブルハイパー核の中間子型弱崩壊のスペクトルを計算し,生成物の同定に利用できることを示した。現在,米国ブルックヘヴン研究所で行われている実験の理論的根拠を与えるものとなっている。(e)非中間子的弱崩壊については,中重核のシングルハイパー核の寿命を計算し,実験と比較した。多くの崩壊チャネルがあり得るダブルハイパー核への応用は今後の課題である。
|