研究概要 |
1.パルスNMR測定-AgBr,NaBr;AgCl,NaCl;NaIのNa,Cl,Br,I核について同位核も含めて、スピン-格子緩和時間T_1の温度依存性を77K〜700Kの範囲で測定し、1/T_1=AT^2となる係数Aを決定した。β-AgIについては粉末試料を用いて測定を試みたが、I核の信号は得られなかった。 2.AgI単結晶の作製-NaIとの対比のため、β-AgIの単結晶をブリッジマン法で作製する計画であったが、その後β単一相を得るには、飽和AgI-KI水溶液から結晶成長させる(Mills法)特殊な方法を用いる必要のあることが判り、今年度中には作製できなかった。 3.解析とまとめの考察 (1)係数Aをイオン模型に基づいた計算と比較し、共有結合性の割合を定量的に評価した。その際、電子雲の重なりについては、s,p-電子のみならず、最外殻d-電子についても考慮し、Hartree-Fockの波動関数を用いて、Lowdinの方法で計算した。 (2)共有結合性度λの値はナトリウムハライドでは2%以下であり、通常数%と言われていることとよく符合する結果を得た。一方、銀ハライドではこれらより一桁大きく、AgClで20.5%、AgBrで24.5%である。銀ハライドの場合、結合力は中心力ではなく共有性が大きいことが予想されていたが、そのことを数値的に確認したのはこれが初めてである。さらに、λ値をPhillipsのイオン性度と比較し、結晶の配位数と不安定性について考察した。これらの結果について公表した。
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