研究概要 |
単位格子に単層のCuO_2面を持つ超伝導体(いわゆる214系)では、頂点酸素の有無によって3種類のCu-Oネットワーク(T相,T相,T^*相)が存在する。T相の代表的な物質である電子ドープ型超伝導体Nd_<2-X>Ce_XCuO_4や、T^*相の物質であるNd_<2-X-Y>Ce_XSr_YCuO_4の電気的特性はホールドープ型のT相とは異なっており、特にT相の熱伝導率はT相とは温度依存性と絶対値においてかなり特異である。熱伝導率はT_c以下でも測定可能な物理量であり、超伝導状態におけるフォノンの振る舞いについて重要な知見を与える。本研究では、T相構造を有するNd_<2-X>Ce_XCu_4及び、T相構造を有するLa_<2-X>M_XCuO_4(M=Ba,Sr)を作製し、熱伝導率、熱拡散率と超伝導との関係を検討したものである。研究の成果は以下の点である。 Nd_<2-X>Ce_XCuO_4(0<X<0.3)焼結体を作製し、熱伝導率k、熱拡散率αを測定した。その結果、ウムクラップ散乱に起因する30K付近のkピークは、0<X<0.1の範囲で増大し、0.1<X<0.3の範囲でXの増加とともに減少することがわかった。TW理論による解析から、Xの増加とともに境界散乱の減少や点欠陥散乱の増加が示唆された。 Nd_<1.85>Ce_<0.15>CuO_4において、焼結⇒クエンチ⇒Ar中の熱処理により、T_c=20K,p=22mΩcm(300K)の良質資料を作製した。熱伝導率の解析から、超伝導性が現われ始める″quench″処理によって、電子によるフォノン散乱が出現、高いT_cを実現する″Ar中のanncal″処理によって、点欠陥及び電子によるフォノン散乱が減少することがわかった。従ってNd系においては、電子一格子相互作用は超伝導発現の直接的な原因にはなっていないと考えられる。 T相構造を有するホールドープ型超伝導体La_<2-X>M_XCuO_4(M=Ba,Sr)焼結体を作製し、組成Xと熱伝導率の関係を明らかにした。非常に大きな熱伝導率を有するLa_2CuO_4は、微量のBa置換により熱伝導率が大きく減少した。この結果は、two-level tunnelingのような新しいフォノンの散乱を考えることにより説明することができる。
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