研究概要 |
今までのNMR研究により、スピネル型結晶構造を持つ銅硫化物Cu_<1.5>Co_<1.5>S_4における超伝導の発現は,4面体サイトの銅イオンの反強磁性スピンの揺らぎの増大と強い相関を明らかにしてきた.本研究では銅置換量を系統的に変化させたCu_<1+x>Co_<2-x>S_4(x=1〜0.5)の領域に研究を広げてその本質をしらべた.その結果 1.NMRスペクトルの解析から,x>0のCu-rich領域では,八面体BサイトにCuを置換することができず,x=0.5の仕込組成で作成した試料はCuCo_2S_4であることが判明した.従って(Cu_<1-x>Co_x)Co_2S_4(x=0〜1)が研究対象となった. 2.核スピン格子緩和時間およびナイトシフトの温度依存性の測定により,x→1 (CuCo_2S_4)に漸近するに伴って,局在性のやや強いCuスピンの反強磁性スピンの揺らぎが増大するとともに超伝導転移温度が上昇する. 3.CuCo_2S_4-CoCo_2S_4の昼間領域ではパウリ常磁性を示すがx→0(CuCo_2S_4)に漸近するに伴って,こんどはCoイオンのスピンによる遍歴電子型の弱磁性が出現する. などを明らかにした. 今後も引き続き,CuCo_2S_4-CoCo_2S_4の全領域にわたってd電子の強い相関が引き起こす多様な物性の発現機構を明らかにしていくとともに,CuCo_2S_4の核スピン格子緩和時間の超伝導領域での温度依存性をHe3の低温領域まで測定し,この系における超伝導波動関数の対称性を調べていく.
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