研究概要 |
1.磁気スピン間の相互作用を系統的に変えて,擬一次元三角格子系におけるスピンフラストレーションとスピン秩序の関係を明らかにする目的で,混晶単結晶CsNi_<1-x>Fe_xCl_3(x=0.002,0.006,0.007,0.01,0.02,0.03)を作製し,超音波・比熱・磁化の測定を行った。 2.母結晶であるCsNiCl_3はT_<N1>=4.74KとT_<N2>=4.29Kの二つの磁気転移点を持つが,NiをFeで置換することによりT_<N1>は低下し,x_c=0.007でT_N=4.23Kの一つの転移点となる。さらにxを増大させるとT_Nは再び上昇し,x=0.03でT_N=4.59Kとなる。超音波測定の結果は,T_<N1>とT_<N2>の間ではスピンのxy成分が揺らいでいるというモデルを支持する。磁化測定の結果は,x_c以下の濃度では異方性が非常に小さいのに対し,x_c以上の濃度ではxy面内を容易軸とする強い異方性を示す。 3.転移温度のFe濃度依存性,超音波・磁化測定の結果は、Fe置換によりスピン間相互作用がイジング的ハイゼンベルク型からXY型にクロスオーバーしているとして解釈できる。さらに転移点近傍での比熱の測定結果から求めた臨界指数も,x_c以上で急激に上昇する。これは,スピンの対称性の異なったカイラルユニバーサリティークラスでの臨界指数の違いとして定性的に理論の結果とも一致し,クロスオーバー効果によるものと考えられる。 4.予定の一つのNMR測定には近々取り掛かれる段取りになっており,上記解釈のミクロなレベルからの裏付けが可能となるであろう。 5.これらの成果については,今夏開催される国際低温学会(LT21)において発表する予定で投稿中である。
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