研究概要 |
ネマチック液晶薄膜において,上面ではダイレクターが面に垂直,下面では平行であるような複合的境界条件をもつ系におけるマクロパターンの形成を数値的に研究した.この系では,バルクの問題を扱う際には無視されてきた「表面項」(系の表面積分に帰着される項)が重要な役割を果たす.従来のモデルは,弾性定数に等方近似を施したものであったが,本研究では,あらたに弾性定数の異方性をとりいれ,かつ,液晶ダイレクタに対する境界条件を容易に変えられるセル動力学モデルを考案した.出発点としては,フランク自由エネルギーとTDGL方程式を考えるのであるが,離散化モデルの構成にあたっては,それをエネルギー表現において行なうのではなく,運動方程式においておこなう点が新しい着想である. 表面項,特にK_<24>項とバルクの弾性定数とのかねあいにより,周期的なパターンが成長する.たとえば,厚み4層,典型的なバルク弾性定数(K_1-K_3)/K_3=-0.3,(K_2-K_3)/K_3=-0.5の系でK_<13>/K_3を固定してK_<24>を動かすとK_<24>/K_3=0.35以上で周期的なパターンが現れ,K_<24>の増大とともに周期は短くなる.K_<24>が大きいところでは,周期はK_<24>-K_<13>/2に反比例する. ダイレクタが一様にそろうバルク系の秩序形成過程と違い本研究の対象のような周期的パターンが現れる系では格子の異方性の影響が大きく,その影響を解消するためには表面項の離散化において第2近接相互作用も考慮にいれなければいけないということもわかった. また,厚さ10μm程度のネマチック薄膜において実験的に見出されているboojumをむすぶ紐状領域へのゆがみの集中に関連して,もし,基盤面に一方的な異方性があれば,そのようなパターンが現れることを見出した.
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