研究概要 |
滑らかな表面を持つ結晶の成長では表面に直線的な原子ステップが等間隔に並んだ微斜面が出現し,これが成長や昇華をする時には,ステップに沿った揺らぎに対する直線ステップの不安定化(ステップの蛇行)や,疎密の形成による等間隔なステップ配置の不安定化(バンチング)が見られる.また,はじめは直線上であったステップも成長とともにゆらぎが増大し荒れてくる.結晶成長にともなうこれらのステップの挙動を解明することは,結晶の成長機構を理解し表面のモルフォロジーを制御する上できわめて重要である.またこの問題は,非平衡統計力学で近年関心が集まっているパターン形成や非平衡ゆらぎの成長などの問題の現実的な例でもある. 本研究では,沿面成長の標準的なモデルにステップ間相互作用や結晶異方性を取り入れて拡張し,表面拡散場中でのステップの運動や2次元結晶のパターン形成について理論的解析とシミュレーションによって,以下のことを明らかにした. 1.ステップ・カイネティクスの非対称性や外場による原子のドリフトなどの原因でステップの上段と下段のテラスの表面拡散場に非対称性ができると,バンチングや蛇行が起きる.非線形効果を考慮することで,安定な周期的パターンや乱れた時空カオス的パターンの出現が系の対称性の反映であることが理解される.またステップの蛇行のカオス的な振舞いは,結晶の異方性が十分強ければ押さえることができる. 2.直線状のステップが成長していく際のゆらぎの変化は,結晶の格子構造を反映していくつかの段階に分けられ,後期過程では過飽和度によって線形成長則から非線形成長則への移行が見られる. 3.フラクタル凝集体の成長則や平衡への緩和則は,成長機構だけではなく凝集体の幾何学的なフラクタル次元で決定される.
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