研究概要 |
1990年11月の噴火開始以来実施してきた精密重力測定データには,地下のマグマの運動とは無関係な種々の"雑音"が含まれている.そこで,今年度は,これらの雑音の特性を解明し,その影響を定量的に評価するための研究をおこなった.具体的な内容は以下のとおりである. 1.火山活動静穏期の重力変化を明らかにするため,1995年8月,重力計3台を用いて重力測定を実施した. 2.このデータをも含めて,CG-3型重力計の感度係数の誤差を見積もった.その結果,CG-3型重力計の感度係数には公称値の1〜14x10^<-4>の誤差があり,個々の機械によって大きく異なっていること,G型重力計に比較して数倍誤差の大きなものもあることが初めて明らかにされた.このことは,火山地域のような重力差の大きな地域における測定では,使用する重力計が異なること100μgalにも達する測定差が生じるということを意味しており,重力変化を論じるためにはその補正が不可欠であることを示している. 3.これまで溶岩ドームの成長による地形変化の影響を定量的に見積もってきたが,本年度は新たに,山麓での火砕流堆積物による谷の埋設,山腹でのガリ-の発達による地形変化の影響を,デジタルマップを作成して定量的に見積もった.その結果,山腹・山麓部の地形変化による影響は,測定誤差をやや上回る20μgal程度であることが判明した. 4.地下水変動の影響を解明するために,地下水面自動測定システムを整備した.しかし,まだ実験中であり,実際の地下水変動データに基づくその影響の評価は,来年度の課題として残された.地下水変動の影響が定量的に評価できれば,地下のマグマの運動に起因する真の重力変化を抽出することが可能になる.
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