研究概要 |
本研究は日本国内に設置された微小振動観測網を群列地震観測網(Seismic Array)として利用し,地球深部を起源とする微弱な地震波を検出し,それを解析することによって地球深部の構造を解明を目指したものである.本研究では主として日本列島大アレーのデータで観測された未知の地震波位相の解析を行った.この未知位相は当初マントル最下部D"層に起源を持つ位相と推定したが,解析を進めるうちに,この未知位相は下部マントル深さ1200〜1300kmの速度不連続面からの反射波(P_<1200>PP又はPP_<1200>P)であることが明らかになった. 本研究では,従来研究されていなかったPPPの先行波を利用して,下部マントル内の速度不連続面を解析した.この解析によって以下の事が解明された. 1)South Sandwich Islandsを震源とする地震からP_<1200>PPが観測され,南米北部か北米北部の下のいずれかの地域の深さ1200kmに速度不連続面が存在すると推定された.最近の3次元速度構造の結果から南米北部は,沈み込んだプレートが1200〜1300kmまで達していると考えられ,プレート先端の深さとP_<1200>PPの反射点の深さがほぼ一致している. 2)Santiagoで発生した地震でも同様の地震が見られた.これより,アフリカ南端沖またはインド南端沖の地域の深さ1300kmに速度不連続面が存在すると推定される.このうえインド南端沖は,P'P'先行波の解析から深さ約1250kmに速度不連続面があるとされていた場所とほぼ一致している. このような下部マントルの地震波速度不連続面の原因は,高圧実験等で検証されていない未知の相転移がグローバルに下部マントルに存在する,沈み込んだプレートの物質が部分的に相転移を起こしているの両説が考えられるが、いずれかの説を支持する決定的な証拠はない.この解明には,より多くの観測事実を更に積み上げることが必要であり,この方面の研究を今後も推進したい.
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