研究概要 |
火山性地震は通常規模が小さく,火口に近づくほどより良い波形がとらえられる.したがって,本研究では,浅間火山を調査対象とし,東京大学地震研究所浅間火山観測所が従来から保持してきた11点の地震観測点に加え,1996年10月に山頂火口の近傍に4点の地震観測点を新設した.これより得られたデータを解析することにより,浅間火山で発生する火山性地震・微動に関して,以下のことが明らかになった. 1.波形の特徴 従来の山腹の観測点と,新設した山頂火口近傍の4観測点とで,波形にどのような差異があるのかを比較した.B型地震は,震源が火口直下にあり,浅間山で最も発生頻度の高い火山性地震であるが,山頂の観測点で得られた波形は,従来の観測点のものと比べて明らかに振幅も大きく,波形も明瞭である.特に火口リムの脇に設置した点の波形は,初動付近が顕著であり,後続波が素早く消失する.また,従来の観測点では明瞭でなかったS波の初動が認識できるようになった.N型地震は,ほぼ単一な周期の振動が単調に減衰する地震であり,その震源はB型地震の分布する範囲に含まれるが,波形もB型地震と同様に,火口に近づくほど明瞭であり振幅も大きい. 2.震源域分布 浅間山の火山性地震は,殆どがS波の初動が不明瞭なので,震源決定はP波の初動を用いて行われる.浅間山では、1996年11月10日より12月末日までやや群発的に地震が発生した.この内12月1日から12月31日の間に発生した地震の中で震源決定された事象を用い,山頂の4観測点を震源決定に加えた震源分布と,従来の11観測点だけで決めた震源分布を比較した.山頂観測点を加えた震源分布は,B型地震の発生する範囲が狭い範囲にまとまった.特に深さに関しては顕著で,浅い部分に震源が密集するようになった.更に,B型地震と火口直下やや西よりの深部に分布するA型地震の震源が明確に区分されるようになった.
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