研究概要 |
本研究の主要なフィールドである霧島火山群・新燃岳において比抵抗構造を詳細に調査した.その結果,「厚さ200m程の高抵抗の表層の下に5Ω・m程度の帯水層と見られる低比抵抗層が広く分布し,海抜0m付近まで続いている.その下には50Ω・m程度の高い比抵抗層をはさみ,約十km以深に数Ω・mの低比抵抗層が分布している.この低比抵抗層は,火口直下では海抜下1kmまで浅くなっている.」事が明らかとなった. 一方,新燃岳では,地震の多発に伴う微動の発生がしばしばあり,噴火にこそつながらないが,地下の温度上昇を示す地磁気の異常変化が観測されている.これらの異常活動と構造との関係を明らかにするため,新燃岳周辺において地震のアレイ観測を実施した.その結果,新燃岳に発生する地震は,通常海抜下0〜2kmで発生しており,深さ約10kmから火口下浅部に盛り上がっている低比抵抗層の最上部とその上の高比抵抗層に対応する事がわかった.1991年の微噴火の際に精密測量により検知された山体の膨張・収縮の圧力源のも,同じ低比抵抗層の最上部に位置していることから,この層はマグマの上昇域に対応すると考えられる.また,地磁気観測により検知される熱消磁は,火口直下の浅部であることは確実で,帯水層内と推定される. 1995年4月25日には,低比抵抗領域の最上部でまず地震が連続して発生し,その翌日にそれより浅い部分で地震が多発すると共に継続時間8分の微動が帯水層内で発生した.この事実は,低比抵抗層内に存在するマグマが,地震を発生させながら高比抵抗層内へ上昇し,帯水層に接触することで,微動が発生した事を示唆している.これまでしばしば観測された熱消磁は1991年の微噴火は,こうして供給された熱エネルギーにより,帯水層内で温度上昇が起き,極端な場合は水蒸気や火山灰を噴出したものと解釈されよう.今回の異常現象は,火山体の構造と地震や微動,山体膨張の発生との空間的関係が明らかとなった点で意義深い.
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