研究概要 |
原始地球において発生したと考えられる隕石の衝突によって出されるエネルギーによってアミノ酸合成が行えるかどうかの実験をこなった.ステンレス製の容器の中に出発物質となる溶液を入れておき,容器の外から宇宙研の二段式軽ガス銃で発射された高速度弾丸(7mm径のプラスチック円柱の前面にステンレスヂスクを貼ったもの,速度3m/sまで)を衝突させた.出発物質としてアンモニア,ホルムアルデヒド,水を1:1:12のモル比で混ぜたものと,アンモニア,メタノール,水を1:1:3で混ぜたものの二種類をつかった.衝突によって発生した衝撃波は容器中の液体を通過し溶液に化学反応を引き起こすことが期待される.衝突後,溶液を回収し,不純物の混入のないよう慎重に,いくつかの処理をした後,イオン交換クロマトグラフィーを用いてアミノ酸を同定,定量を行った.比較のためにまったく同じ試料を準備し同じ条件に置いたもの(衝突はさせない)を用意しこれを分析し本実験との比較を行った(ブランク実験).その結果衝突させたほうにはもっとも簡単なアミノ酸であるグリシンがブランクに比べて有意に生成していることが明らかになった.得られたG値はホルムアルデヒド系の出発物質では10^<-3>オーダーであり,メタノール系では10^<-4>オーダーであった.これらの実験結果から,隕石の衝突は原始地球上ではアミノ酸の生成に有効に働いた可能性が十分あると結論づけられる.
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