研究概要 |
本研究の目的は,地球・惑星大気で観測される東西平均流の緯度分布の構造を考察することを念頭に,回転球面上の非発散2次元流体系の振舞いを考察することにあった.同時に,研究に必要な計算環境の開発をおこなうこと自体が本研究の大きな目的の一つであった. 東大と九大との間でのインターネットを介してのソフトウェア資源と環境の統合化実験においては,当初想定していたプログラム構造の数々の問題点(主にオーバーヘッドの問題)が発見された.高次元のモデル(3次元球対流モデル,浅水波モデル)とのソフトウェア共通化と構造化の進展は不十分で終らざるを得なかった.現在,よりよい構造化へむけて検討を進めている.一方,ネットワークを介する共同研究実験では,SINETの発展もあって良好な環境でワークステーション間の交信を行うことができた. 球面2次元実験では,ロスビー波の極域での吸収とそれによる東風加速がほぼ例外無っく発生することが実験で確かめられた.非線形項を弱非線形による平均流加速に限った実験を行うことにより,加速にかかわる力学は弱非線形論によって記述されるものであることを示した.しかしながら,波束を用いたWKB的記述に対応させる実験は成功するには至っていない.臨界層での反射吸収が見えるであろう初期値を与えて計算をおこなうと分解能が足らないことによるみかけの吸収反射が生じてしまう. 3次元球殻系での計算においては,対流による赤道加速がおこる条件を調べ,その条件を球面幾何学に制約されたロスビー波にともなう運動量輸送によって説明することを行った.3次元球殻の対流においては系の回転による二次元的制約が働き,運動量輸送のおこり方はロスビー波の性質によってうまく記述される.
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