1.形成時に同時に形成される大気は金属鉄と反応するために水素に富んだ組成の還元的大気であり、また炭素の大部分は金属鉄に奪われていると期待される。大気組成は大気散逸と惑星形成末期の隕石・彗星衝突による影響で変化する。2.結果として形成される原始大気の組成は、散逸を免れた還元大気と隕石・彗星の衝突で供給される大気の量比と、衝撃加熱された大気の冷却過程で平衡が破れる温度で決まる。3.平衡が低温(500K以下)まで維持され、かつ、原始大気の半分以上が隕石・彗星起源の場合を除いては、大気中には5%以上のメタンが残る。4.このメタンは光化学反応によって重合され、ハイドロカーボンが形成され、原始海洋に供給されることが期待される。5.平衡が低温まで維持され、かつ、原始大気の半分以上が隕石彗星起源の場合には、大気中の二酸化炭素量と同程度の量のグラファイトが生成されて地殻に埋め込まれる。6.現時点ではどちらのシナリオが合理的か理論的には判断が付かない。7.現在推定されているマントル・大気中の揮発性物質存在量から、原始大気中での隕石・彗星起源の気体の量比は0.01〜0.2と推定される。この結果はマントル中の揮発性元素存在量の推定に大きく影響を受ける。しかし、この値を採用すれば原始大気中に大量のメタンが生成されたことが示唆される。8.以上の結果から原始大気中では従来考えられていたよりも多くのメタン生成がおこり、還元的であった可能性が示唆される。本研究では平衡化学反応の視点から問題を検討したが、微惑星衝突に伴う大気の非平衡化学反応が重要であることがわかったので、今後はこれを検討する必要がある。また大気中の光化学反応で形成される凝縮物が与える影響も今後の検討課題である。
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