研究概要 |
オーロラトモグラフイは多点CCD画像から3次元の広がりを持つ発光構造を復元する逆問題であり、我々は従来から2点ステレオ観測画像について、関数フィッティング法やMART法などによる再構成の研究を進めてきた。1995年3月に,スウェーデンのALISネットワークと我々の共同観測が実現し、初めて得られた多点単色光画像組をもとに多点画像解析に適合した計算機のユーザーインターフェースの開発と,3次元構造の復元が試みられた。underdeterminedな逆問題であるオーロラトモグラフィに対し,オーロラの基本的性質を制約として含んだMART,SIRTアルゴリズムが検討され、またラドン変換を基礎とする解析的手法についても考察がなされた。1995年12月には,ALISの拡充に伴い,我々の観測点を含む計6点での観測が実施され、フォールドのあるオーロラやダブルアークなどいくつかの例につき,修正SIRT法を用いた解析と解の一意性についてのシュミレーション、線積分投影法およびボリューム投影法の2種類の撮像モデルの比較,サブボクセルによる分解能向上等の検討を行なった。これらを通じて,557.7nmの発光強度の高度プロファイル,オーロラダイナミックスに直接関わるホールドの3次元構造復元などの結果を得た。また、MART法、SIRT法、疑似逆マトリックス法、フィルタ逆投影法などについてさらに詳しい数値シミュレーションを進めた。1997年1-3月には,ALISのみを用いた遠隔トモグラフイ観測が実施され、また科学衛星FASTおよびEISCATレーダとのコンジャンクションが図られ,興味ある観測データが得られた。これらから多重アークや異なる波長でのオーロラ構造の復元解析が試みられ、発光素過程に関わる解析結果や,多重アークの3次元構造など,トモグラフィ解析手法の確立に寄与する成果が得られた。さらに,FAST衛星、EISCATレーダーとの総合解析が始められた。また,積分球を用いたカメラの絶対較正、再構成結果のコンピュータビジュアリゼーションについても検討がなされた。
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