研究概要 |
本研究では(超)高温変成岩分布地域における,地殻溶融プロセスおよび花崗岩質マグマの発生について精密な解析を行うことを目的に,国内(日高,肥後変成帯),スリランカおよび南極ナピア岩体の野外調査と岩石学的解析を行った。これには,本研究費による偏光顕微鏡を駆使した. 1.解析が進行中であったフッ素含有黒雲母の溶融実験を,ニューサウスウェールズ大学において再開続行した.黒雲母中のXF=0.3の場合1025℃,XF=0.6の場合1075℃でも黒雲母は安定に存在し,超高温変成岩における黒雲母を含む鉱物共生の説明が可能になった.結果の一部は,平成7年9月の国際南極地学シンポジウム,平成8年8月の万国地質学会議で発表した. 2.肥後変成帯において,約60日間野外調査を行った.調査は肥後変成帯全域における熱構造を明らかにする事を目的とし,あわせて再高温部における部分溶融過程の詳細を観察した.採取した膨大な試料から,サイフィリン-コランダムグラニュライトやザクロ石-コランダムグラニュライトを発見した.サフィリンは国内では日高変成帯に次いで2番目の産地となる.この岩石と類似の岩石はコートランド岩体で見出されるだけで,著しくAl,Mgに富むSi不飽和な岩石であり,地殻下部(8〜10kbar,950℃)における部分溶融にともなう残留固相とみなされ,部分溶融に関連する黒雲母はXF=0.2程度であることと調和的である.結果の一部は,平成8年度の地球惑星合同学会,地質学会,万国地質学会議で発表し,国際誌にも投稿中である.. 3.日高変成帯においても約60日間野外調査を行い,変成帯のほぼ全域について部分溶融過程の詳細を観察した.また,塩基性変成岩の部分溶融についても検討するため,変成帯全域の各種各閃岩類の化学組成を再検討し,著しい南北変化が確認された.成果の一部は,地質学論集等で公表した.
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