研究概要 |
本研究では,石炭紀〜ジュラ紀に古太平洋域の大陸縁海・島弧・大洋海山で形成された生物礁を対象として,その堆積相や生物相の調査・解析を行い,生物礁の時空分布を把握するとともに,生物礁の形態・生物群集構成・枠組み構造について,地質セッティングと時代ごとにその傾向や特徴を検討した.その上で,背景にある古気候・古海況・海水準変動などの外的要因と生物大量絶滅や礁生態系などの内的要因ついて,全地球的な観点と地域的な観点の両面から考察を深めた.結果は,以下の通りにまとめられる. 1)古太平洋域の生物礁は,古地理的に偏在した分布傾向を示す.これは形成当時の古気候モードに加えて,大陸地塊の配置や表層暖流系と湧昇流の卓越に起因する.また,現在の偏在は形成時のプレートの分割配置とその後の移動を反映している. 2)古太平洋域の生物礁は地史的にみて発達・衰退に偏りがある.これは生物大量絶滅に関係するとともに,当時の大陸地塊と海流系の変化も反映している. 3)大洋海山や島弧の生物礁は,大陸縁海のものより,小規模な形態・堅固な枠組み構造・多様度の高い生物群集構成などの特徴を示し,特に石炭紀前期やペルム紀中期にその傾向が強い.これは形成場の地形や海況(波浪・潮流)が異なることに加えて,当時の表層暖流系・湧昇流および海水準変動が影響している. 4)古太平洋域とテ-チス海域の生物礁とを較べた場合,各地質時代で違いが認められ,特に石炭紀・ペルム紀で大きな相異がある.これは当時の大陸地塊の配置による古海流系の違いを反映している. 5)個々にみた場合,島弧や大洋海山の生物礁の中には,当時の生物礁としてはきわめて特異なものがいくつか含まれ,生物礁の進化上で重要な証拠となりうる.
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