研究概要 |
西南日本内帯の石灰系・ペルム系・トリアス系の層状チャートについて,化石年代学的検討の進んだセクションにおいてIshiga-diagramを作成した。その結果,3次の異なる堆積サイクルが解読され,第一次のオーダー(100万年前後)は従来の化石帯の境界に一致することが判明した。第二次のオーダー(20万年前後)は,第一次のオーダーのサイクル中に対をなして5個認められる。このピークはさらに細かなピークに分解が可能であり,層状チャートのもっとも基本的な堆積サイクルである。単層オーダーの堆積サイクルは約2万年前後と推定される。 Ishiga-diagramによる堆積サイクルのピークは生物生産量に対応するので,地質境界とこの堆積のピークがどのように関連しているかについて検討した。その結果,石炭紀からペルム紀については生産量が増加する傾向にあり,ペルム期末では他の生物群でみられるような衰退とは逆に生産量のピークがみられるといった特徴を持つ。 そこで,沿海の砕宵岩層ではどのような変化が記録されているか,研究を発展させて検討した。ペルム紀について検討した結果,中・上部の境界ではイオウの濃集,有機炭素,窒素の減少,Th/U比,V/(V+Ni)比の減少,As,Sbの濃集がともなわれることが元素組成に分析から判明した。中/上部境界の下位におけるこのような変化は,火山活動にともなう過剰の栄養塩の供給による基礎生産の高まりが起こったと予想される。そして,有機物の分解によって堆積盆地が還元的環境へ変化し,引き続いて放散虫生産量の衰退が生じたと考えられる。このような変化が遠洋性堆積物である層状チャートの堆積記録にも同時間的に対応していることが今回の検討で判明した。したがって,Ishiga-diagramは総合的に見ても地質現象に対応した海洋環境の変化を解明する有用な手法であるといえる。
|