研究概要 |
1 岐阜県可児市土田で発見された日本初の第三紀小型哺乳動物群(土田ローカルフォーナ)は、本研究を始めた時点で2目4科4属が知られていたが、本研究の調査により、通常大型哺乳類に分類される食肉目と偶蹄目も含め、計5目7科9属となった。すなわち、食虫目Plesiosorex sp.、ウサギ目cf.Amphilagus sp.、齧歯目Youngofiber sinensis,Anchitheriomys n.sp.,Pseudotheridomyssp.又はPentabuneomys sp.、エオミス科n.gen.n.sp.、食肉目クマ上科、イタチ上科、偶蹄目トラグルス科である。 2 エオミス科の新属新種はチェコと岐阜県のみから知られ、しかも両産地とも各々1標本しかみつかっていない希少動物であるが、ヨーロッパとアジアの小型哺乳類の古生物地理を考察する上で重要である。 3 ヨーロッパとはYoungofiberを除く5属が共通しており、陸生哺乳類の交流がさかんであったことが理解される。北アメリカとは3属が共通し、ベーリング地域を通じて交流があったことが読みとれる。小型哺乳類を含む、より多様な哺乳類で交流があったことが明らかとなった。 4 フォーナ全体としてはチェコの「メルク-ル・ノルド」動物群が近似する。その年代はヨーロッパ陸生哺乳類年代のMN3a(約2200〜2000万年前)である。土田ローカルフォーナを産する中村累層は長鼻目を産しないが、その上位の平牧累層からは多産する。ヨーロッパでは長鼻目が出現するのはMN4(約1800万年前)以降である。すなわち、ヨーロッパのMN3とMN4の関係は岐阜県の中村累層と平牧累層の関係と一致し、土田はヨーロッパのMN3に当たると判断される。中村累層上部層のフィッショントラック年代は約2100〜1900万年を示し、以前考えられていた年代よりやや古い可能性が強い。
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